テンセントのIP戦略とギアの考え方

最近はすっかり日本でも企業研究の対象として定着してきたテンセントさん。

2017年の売上約4兆円(2370億元、1元=17円換算)、営業利益1.5兆円(9000億元)、wechat user10億人超え!とか衝撃的な数値が2017年のIRには並んでます。この規模で売上/利益の成長率が50%超って考えられないですね。

 

テンセントみたいな会社が日本から生まれるにはどうすればいいのかなって思ってテンセントのIRみてちょこちょこと研究してました。

最初に気が付いたことが、テンセントのIRって毎年このギアの重なりの絵が乗っていて、テンセントはこのギアの歯車の重なりによりより大きな動力を生み出すという考え方を経営上とても大切にしてることがわかりました。

 

2017年テンセントIRより

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ちなみに2017年と2016年でギアの絵があることは一緒ですが、ギアの中身が変わってます。

 

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このギアってすごく大事な考えで人類の発明の中でかなり重要なもののひとつだと、今週号のぼくの好きな漫画である[Dr Stone]でも言ってました。

 

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テンセントは2018年はビデオ、モバイル決済、クラウド、AI、小売り5つの領域に未来に向けて投資するって言ってるので、その中でビデオの部分を切り出して考察してみたいと思います。(小売りとか決済とかは分析たくさんあるのでw)

 

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テンセントビデオ、って2017年じつはめっちゃやばいことになってて月額定額課金者5600万人で四半期の売上が850億円(約50億元)というスーパーやばい数字を叩き出してます。月額会員数が昨対で121%アップはやばいですね。ちなみにNETFLIXは1億人、1兆円越えているのでまだそこまではちょっと差があるようです。一人当たりの単価は14RMB(約220円)なので、ここも今後改善の余地が大いにありそうです。(NETFLIXは10ドル前後)

中国と言えば無料海賊版という時代を長いこと過ごしてきたので、中国の動画ストリーミングサービスが売上でここまでに来るとは時代は変わったな感がすごいです。

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テンセントは「ギアの考え方」を重要視する会社なので、テンセントのエンタメ領域における「ギア」を作図してみました(公式と関係ない筆者の想像です。)

 

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音楽

  • 有料ユーザー数1.2億人
  • 世界3大レーベルの全てとライセンス契約
  • 系列の3アプリで中国音楽アプリ市場の75%以上を占拠

ビデオ

  • 月額定額課金者数5600万人
  • 20174Q売上850億円
  • DAU1.4億人

漫画アニメ

  • DAU1.2億人
  • 国産アニメTOP10に8作品

電子書籍

ゲーム

  • 売上約2兆円
  • オンラインゲーム世界一

私はもともとモバイルオンラインゲームの仕事をしているんですが、エンタメ企業の強くなるために必要な3要素があると思っていまして、世界最強のエンタメ企業の一つであるディズニーを例に出しつつ解説します。

新しいIPを作る力(例えば「アナ雪」みたいな新しいIPを生み出すピクサーみたいな力)

価値のあるIPを持っていて価値を守りつつ、活用できること(世界中のディズニーランドでミッキーマウスはいてくれるけど、でも同時に出現しない、とか。)

自社の作品を広範囲にブロードキャストする力(ディズニー新作映画の配給する映画館は圧倒的、そのほかYouTubeのディズニーチャンネㇽなど)

 

こうやって見てみると、テンセントはもともとものすごい力をもっているゲーム事業という強力なマネタイズマシンを大きなギアにして、音楽、動画、アニメ/漫画、電子書籍というブロードキャスト力を強化することを最優先しつつ、もっとも時間のかかる「IPを作る力」も猛烈な勢いで強化してるのではないかと思います。(テンセントアニメが中国産アニメTOP10のうち8つを占領)

 

長くなりましたが、じゃあ日本でどうすればいいの?っていうと、日本もテンセントみたいなスーパーパワーの会社が出来てエコシステムすべてを構築するようなことができるといいですね、という割と月並みな結論が出ます。

 

それをどうやって実現していくかは、ギアの考え方をベースにまた別途考察していきたいと思います。

 

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